女性特有の健康問題の多くは、10歳から15歳に始まる月経、45歳から55歳に終わる閉経によるホルモンの変化が関係しています。月経に伴う痛みは月経困難症と呼ばれ、月経のある女性の半数以上が、毎月1日から2日程度の痛みを感じます。通常の痛みは軽度ですが、一部の女性は痛みが強く、他の症状も伴い、毎月数日間は通常の活動ができなくなることがあります。痙攣性の痛みは、子宮を収縮させて内膜を剥がすプロスタグランジンというホルモンレベルが変化することによって引き起こされます。月経周期の最初の2日間は、これらの子宮の収縮がより激しくなるので、痛みが悪化する場合があります。閉経は、血中エストロゲン濃度の低下と関連し、通常は月経周期の変化と共に始まります。この時期には、卵巣が萎縮し始め、月経周期を刺激するホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの産生が減少します。この様なホルモン変化のバランスを整え、月経困難症と閉経(更年期障害)の両方の症状の対処に役立つ、様々な総合的な対策があります。
毎月の月経困難症に耐えるのは困難な事です。月経困難症の症状には、腹痛、腰痛、吐き気、頭痛、全身の疲労などがあり、ホルモンの変化に伴う気分の変化(落ち込みなど)やストレスが生じます。特定のエッセンシャルオイルや、休息、温浴、湯たんぽなどの温熱を腰に当てるなど、症状を和らげるいくつかの自然な方法があります。多くのエッセンシャルオイルには、抗けいれん、抗炎症、リラックス作用があり、ホルモンのバランスを整え、痛みや痙攣を緩和し、ストレスレベルを軽減するのに役立ちます。
クラリセージは、月経周期を調整する女性ホルモン、エストロゲンに似た作用があり、ホルモン調整する効果があります。クラリセージに含まれる植物性エストロゲンは、エストロゲンのレベルを調整し、子宮の健康をサポートし、ストレスレベルを低下させます。
ラベンダーは、優れた鎮痛・抗炎症作用があり、そして鎮静・リラックス作用がある事も知られています。月経前の子宮収縮による痛みや不快感を和らげ、精神的な動揺を緩和し、ストレスを軽減します。高いストレスレベルは、コルチゾールレベルの上昇と関連しています。コルチゾールは、生理不順、気分の変動、急激な体重増加、全身疲労の原因となるホルモンです。
ブルー(ジャーマン)カモミールは、最も強力な抗炎症・抗痙攣オイルの一つであり、マッサージで使用すると、神経系に深い鎮静効果をもたらします。ブルーカモミール5%希釈オイルは、急性の腰痛に直接適用することができます。リラックス効果のあるハーブは、生理中や生理前にお茶として飲むと鎮静効果があります。
スイートマジョラムオイルも、特に女性ホルモンを調整するのに役立つオイルです。このエッセンシャルオイルは強力な鎮痙作用があり、神経に対する強力な鎮静作用により、胃痙攣、神経緊張、筋肉痛や痙攣、片頭痛、頭痛に効果があります。ハーブ療法では、スイートマジョラムはホルモンバランスの乱れを回復し、月経周期の調整に使用されます。また、生理不順やにきびなどの症状を伴うホルモン疾患である多嚢胞性卵巣症候群にも役立つ可能性があります。
セントジョーンズワートオイルは、更年期の症状への効果とは別に、生理痛、イライラ、食欲増進、乳房の張痛などの、一部の女性の月経前症候群 (PMS) の身体的、感情的な症状の緩和に役立つことが研究で示唆されています。ある研究では、症状の重症度が50%減少したことが報告されています。
ある研究では、エッセンシャルオイルのブレンドオイルが、月経痛の患者への効果を評価し、さまざまなオイルの鎮痛効果と、設定された時間で痛みを軽減する能力を調査しました。この臨床試験では、重度の月経痛に苦しむ48人の女性を2つのグループに分けました。一方にはプラセボタイプのクリームを、もう一方にはラベンダー (Lavandula angusifolia)、クラリセージ (Salvia sclarea)、スイートマジョラム (Origanum majorana)の3種類のオイルをそれぞれ2:1:1の割合で3%ブレンドしたクリームを与えました。すべての女性に、最後の月経の終わりから次の月経の始まりまで、クリームで毎日、下腹部をマッサージするように指示されました。研究の結果、アロママッサージオイルの使用で生理痛が緩和され、エッセンシャルオイルを使用したグループでは月経痛の期間が2.4日から1.8日に短縮しました。ブレンドされたオイルには、酢酸リナリル、リナロール、ユーカリプトール、β-カリオフィレンという4つの主要な鎮痛成分が含有されており、これらは芳香成分のほぼ80%に相当します。この研究で、イブプロフェンやナプロキセンなどの一般的な薬とは対照的に、このブレンドの処方が生理痛に効果的な治療の基礎として役立つことを示しています。(研究概要:日本産科婦人科学会産科婦人科学会誌2012年より抜粋)。
上記の研究を参考に、腹痛や腰痛に対処し、ホルモンレベルを調整してストレスの軽減に役立つ効果的でナチュラルな方法は、特定のエッセンシャルオイルを使い、ブレンドオイルを作ることです。痛みのある部分に塗布し、時計回りの方向にゆっくりと円を描くようにマッサージします。最後の生理の終わりから次の生理の初まりまで、毎日下腹部をマッサージします。定期的に使用することで、痙攣性の痛みは徐々に軽減され、消えていきます。ホホバオイルをベースオイルとして使用すると、ブレンドの保存期間が長くなりますし、肌に栄養を与えます。優れたスキンコンディショナーとして保湿剤であるのに、簡単、素早くに肌に吸収されます。他にも、長期保存可能なライトココナッツオイル、マッサージオイルとして人気のスイートアーモンドオイル、デリケートな肌に適したアプリコットカーネルオイルなどがあります。セントジョーンズワートオイルは、特にPMSの調整効果があり、ブースターオイルとして使用されています。
:材料:
ホホバオイル80ml
セントジョーンズワートオイル20ml
クラリセージオイル15滴
スイートマジョラムオイル15滴
ラベンダーオイル30滴
:作り方:
2種類のキャリアオイルをブレンドし、エッセンシャルオイルを1つずつ遮光瓶に加えます。使用前によく振ってください。1日1回、大さじ1杯のブレンドオイルを腹部と腰部に上記のように塗布します。ボトルにラベルを貼り、お子供の手の届かないところに安全に保管ください。
更年期は血中エストロゲンの減少と関連し、通常は月経周期の変化が始まります。卵巣が萎縮し始め、月経周期を刺激するホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの産生が減少します。一般的な症状には、ほてり、気分の変動(落ち込み)、悪寒、寝汗、睡眠障害、体重増加、代謝の低下などです。更年期のホルモン変化のバランスをとるための総合的なアドバイスは、ストレスレベルの管理、定期的な運動、健康的な食生活などがです。睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こす最も重要な要因の1つであることがわかっているので、十分な休息も重要です。
ハーブ療法では、セント・ジョンズ・ワートは不安、ストレス、不眠、抑うつなどの感情を和らげるために推奨されています。なので、気分の変動や更年期の症状に推奨されています。心を落ち着かせるローズや気分を楽観的にするジャスミンなど、ストレスを軽減し、気分を高揚させる効果のあるアロマオイルも更年期の症状に役立つ貴重なオイルです。2020年に実施された臨床試験において、閉経後の女性にラベンダーオイルを使用すると、「身体的、精神的症状のほとんどが改善される」可能性があると結論づけられました。また、別の研究結果では、ラベンダーオイルまたはネロリオイルの吸入において、プラセボと比較して「総合的な更年期症状を低下させる優れた効果がある」ことが示されました。
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